修復腎移植(レストア腎移植)ってなんですか?
修復腎移植(レストア腎移植)とは、腎がんや腎動脈瘤、尿管狭窄などの治療のため摘出した腎臓の病変部分を切除・修復したうえで、慢性腎不全患者に移植するものです。
「病気腎移植」、「病腎移植」等とも呼ばれていますが、腎臓の病気の箇所を修復したという意味ではその腎臓はすでに病気ではないということもあり、正確を期した表現を使いたい、また救われる患者の立場からの表現にしたいとの趣旨から、私どもは現在「修復腎移植」あるいは「レストア腎移植」と呼んでいます。
万波誠医師とそのグループによる「修復腎移植」の第1例は1991年1月に広島県呉市の呉共済病院で行われ、それ以来2006年9月までに計42例が実施されています。 これは現在の日本では、国内で圧倒的にドナー(臓器提供者)が足りない現状の中、ドナーに恵まれない移植希望患者を一人でも多く救おうと、万波誠医師らがやむにやまれぬ思いから進めてこられたものです。
42例の内訳は
非腫瘍性腎疾患22例 (腎動脈瘤6,尿管狭窄4,尿管壊死1,
骨盤腎1,慢性後腹膜炎1,腎膿瘍1、難治性ネフローゼ症候群4
(ネフローゼ症候群4例からは8人のレシピエントに移植))
良性腫瘍4例 (血管筋脂肪腫2,海綿状血管腫1,石灰化腎嚢胞1)
悪性腫瘍16例 (腎細胞癌8,下部尿管癌8)
です。
ドナーになられた患者さんへの治療にあたっては、最善の治療が行われました。しかし最終的には、万波誠医師らと患者さんの話し合いにより腎摘出となったものです。
腎臓がんなどは、超音波、CTスキャン等の最先端医療機器のおかげで、早期発見が可能となり、多くの小さな初期がんが見つかるようになりました。4cm以下の小径腎がんでは「病気(がん)の部分を切除しただけで大丈夫ですよ」と部分切除し腎臓を残して治療することを説明しても、再発の恐れが5%くらいあるため、再発を心配して、どうしても全摘出してほしいと言う患者も少なからずいるといわれます。(片側を全部取り出しても、もう片方があるため生活に特に支障はありません。)
そのような理由で全摘出された腎臓は、ドナーとレシピエント(移植を受けた患者)の双方の患者に十分説明し同意を得たうえ、がんの部分を切除して修復し、家族から腎提供を受けられない方、透析の合併症により命の危機に直面する方などに移植されました。
全42例の修復腎移植のうち、30例(71%)は、2度目以降の移植患者です。中には3度、4度目の患者も含まれていることからも分かるように、比較的、年齢の高い透析患者に対して行われ、ドナーを期待できない透析患者にとって大きな福音になっています。
国内での献腎移植(脳死移植、死体腎移植)の平均待機年数は約16年という途方もない年月であり、その間に移植を待ち望みながら、願いがかなわず亡くなられる患者さんが後を絶ちません。
本来なら破棄される腎臓が修復されて再使用されることにより、透析患者(慢性腎不全患者)が1人でも多く透析から解放されることになります。
その意味で修復腎移植は生体腎移植、死体腎移植に続く「第3の道」として大いに期待されます。